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塩田悦三郎

  1. 野良犬天国

サンチャゴの街には、犬が多い。犬といっても飼い犬でなくて野良犬が多い。どんな繁華街でも2,3分歩けば、1頭や2頭の野良犬と出会う。多い時にはその数が10倍にもなることがある。


住宅街でよく見る光景
歩道を歩く犬、車道を歩く犬
お犬様はどこでもいつでも自由に歩き回っている。

 チリで働くことになって、「狂犬病の予防接種」をすることを求められた。「今時、狂犬病だなんて。」と思ったものだが、こちらに住み始めるとすぐ納得した。

街の中に「野良犬」が沢山いる。日中は、歩道の真ん中で横たわっていることが多い。たいてい寝ている。人間は彼等をよけて歩く。犬公方の再来だ。

詳しいデータを持ち合わせていないが、手許にあるWHOの作成した狂犬病の流行地域の地図(2001年版)を見ると北米・中南米はほとんどが流行地域になっている。流行していないのがはっきりしているかまたは流行状況に関する情報がないのは、日本とヨーロッパの一部・中央アジアやアフリカの一部にすぎないのにはいささか驚いた。

元来犬が嫌いではない私は、彼等をよく観察してみた。日本でたまに見る野良犬とは段違いの体格だ。やせっぽちはいない。犬の種類はくわしくないが、シェパードとか羊見たく毛が多いやつとか野良犬にしておくのはもったいないくらいだ。

どうしてこんなに多いのかと例によってチリ人に尋ねる。みんなそれぞれ勝手な理由をいう。もっともらしいのは、野良犬をいじめると罰金をとられるからだということだ。こちらでは動物愛護の精神が浸透している。

サンチャゴ市内の野良犬は、事程左様におおらかに育っている。多分、厳しい訓練を受けている警察犬やしつけのやかましい主人に飼われている犬よりはのんびりと育っているだろう。

ただ注意しなくてはいけないのは、地方に行った時である。夜間になると徒党を組んで歩っている。犬に咬まれたという話はあまり聞かないが、暗い道で彼等と遭遇したらやはり気味が悪い。

お隣のボリビアで実際にあった話である。若い日本の青年が二度ほど続けて犬の群れに襲われた。若いからだろうか、一生懸命応戦した。幸い犬には咬まれなかったが、あとの処理が大変。

若者はけがをしていた。犬に咬まれたわけではなく,応戦中にころんですり傷を負ったのだ。すぐ現地の病院に行って、治療を受けた。

医者はてっきり狂犬に咬まれたものと診断して、ありとあらゆる薬の処方箋を書いた。出された薬は、飲み薬、塗り薬、注射液合わせて何と20種類近く。当然、副作用がでる。

関係者の判断で、日本で治療を受けることになり急遽帰国。全治2ヶ月。現在では再び任国に戻り、元気に業務に励んでいる。

これは、野良犬がきっかけではあるが、根本的にはボリビアにおける医療ミスの問題でもある。ボリビアは、野良犬の数はチリより圧倒的に多いとのこと。

チリの野良犬の話に戻ろう。彼らが日中、道路の真ん中でどうどうと寝ていることは先程述べた。横になり、4本の脚を伸ばしきってしかも目をしっかりととじている。まさに死んだようになって寝ている。

なぜ道路の端とか軒下で寝ないのか不思議でならない。「邪魔だからどいて」と言いたくなる。でも、チリ人が言わないのに外国人の私が言ったらそれこそ白い目で見られるのは必至だ。「触らぬ犬に祟りなし」。


利用者の多い地下鉄「トラバラ駅」前広場
人通りが多くてもお犬様は気にしないで寝ている
屋台の男性と犬とには主従関係はない

  1. チレニスモはおもしろい

「日本には日本語があり、チリにはチリ語がある」。きわめて分かり易い文章である。しかし、チリではスペイン語が使われているのでこの文章の内容は正しくない。

チリ語というのはないが、チリ人だけが話すスペイン語がある。これをチレニスモ(Chilenismo)という。手許の西和辞典で「チレニスモ」を引くと、「チリのスペイン語の表現(語法)」とある。今回は、「チレニスモ」の一部を紹介して皆様にちょっぴりチリ人になっていただこうと思います。

来智して最初に出会う「チレニスモ」は、数え方ではないだろうか。「一つ、二つ、三つ」をスペイン語では、「ウノ、ドス、トレス」という。「チレニスモ」では「ウノ、ド、トレ」という。語尾の「ス」を省略した簡潔な言い方だ。

2千ペソ(ペソ=貨幣の単位)はドミル、3千ペソはトレミルといえばいい。日本語で「ひー、ふー、みー」という数え方があるが、それと似ている。ただ違うのは、「チレニスモ」は数え方だけでなく、いろんな場面で語尾の「ス」の発音を省略することだ。

スペイン語は英語と同様、名詞に単数複数の区分があり、複数は語尾に“S”をつける。これが「チレニスモ」だと“S”が消えてしまい、日本語と同じように単複同形となる。この点はたいへん親しみ易い。

厳密にいうとチリ人は“S”の代わりに気息音の“H”を発音していると言われているが、なかなか聞き取ることができない。

日本人にとって都合のいい点は、他にもある。多くの日本人が英語の発音で苦労する“TH”の発音は“S”でOKだし、“L”と“R”の区分も例外があるが日本語の発音でも通用する。多くの西和辞典が、スペイン語の発音を発音記号と並べてひらがなやカタカナで示している所以でもある。

1.2冊の本‥‥‥チレニスモについて書籍は多い

この2冊の著者はニューヨーク生まれのアメリカ人
「チリジャングルデのビジネスに生き残る方法」(左)と

「チリジャングルで生き残るには」(右)

辞書の頁

チレニスモの辞書には、本文中の”cachar”について写真のように説明している

辞書を見ているだけでも楽しい。 
 

「わかりますか?」というのを「カチャイ?」という。これはどうも英語の“Catch(理解する)”からきているようだ。欧米語を取り入れると格好いいと思われる傾向は、この国にもあるようだ。しかし、英語の動詞の原形(Catch)を少し変えてカチャール(Cachar)とし、スペイン語の通常の動詞と同じ様な活用をさせて使っているのだからすばらしい。

「チレニスモ」では、語尾に「ポ、プ、プエ」を付けることが多い。「ポッポ、ポッポ」と軽快に聞こえ楽しい。日本語で語尾に、「ネ、サ、ヨ」を多用した場合の聞き苦しさとは大違いだ。

スペイン王立アカデミーの編纂によるスペイン語辞書には、600語におよぶ「チレニスモ」が載っているという。チリ特有の言葉を「チレニスモ」というならば、先住民の言語であるマプチェ語やイースター島のラパヌイ語(パスクエンセ)も「チレニスモ」の仲間になるのかもしれない。

中南米で使われているスペイン語は、スペイン語の方言とも言われている。そのなかでも我が「チレニスモ」は変わった存在だから、「方言の方言」ということになる。

正式にスペイン語を学んだ人からみれば、チリの言葉は「悪い」とされているが、私のようにスペイン語=チリ語の者にとってはそうは思えない。私の周囲には「きちんとしたスペイン語」を学ぶように薦めるチリ人がいる。そう言われても、「チレニスモはおもしろい」からやめられない。

チリに渡り、日本語を教えているWebマスタの友人、塩田悦三郎さんが、知人のメールマガジンに投稿しているサンチャゴレポートという記事を、そのメールマガジン「609studio( http://www.609studio.com/home.html )」とご本人の了解を戴き転載させて頂いているものです。