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塩田悦三郎

  1. パイネ国立公園

サンチャゴに住んでいる日本人の間では、「砂漠は行った?」「氷河は?」というのがしばしば話題になる。これは「北には行った?」「南には?」という意味である。

今回はチリ南部の氷河地帯パタゴニアにある「パイネ国立公園」のお話。パタゴニアは、辞書には「南米大陸南端、アルゼンチンとチリにまたがる台地」とある。私は今年の夏(1月)、この広いパタゴニアの南部にある「パイネ国立公園」を訪れた。


パイネ国立公園の入り口でラクダの親戚「グアナコ」のお迎えをうけました

先ずサンチャゴからプンタアレナスに飛ぶ。飛行時間約4時間。眼下には夏でも雪をかぶっているアンデス山脈が延々と連なる。チリが南北に細長い国だということは承知していても実感したのはこの時。アンデスの左側はアルゼンチン、これはチリ同様長いといえば長いのだが横幅があるので比較にならない。

プンタアレナスから車で約3時間北上し、プエルトナタレスに向かう。

途中ペンギンの保護地区に立ち寄る。かわいらしいペンギンの仕草に顔をほころばせる。「パイネ国立公園」はここからさらに車で3時間。途中の道路はほとんど未舗装。すごいほこり。クーラーはあるがあまり効かない。点在する低木林。木々は真横に伸びている。一年中止むことない強風のためだ。時折、白い木を見ることがある。病菌に犯されているのだ。不気味。

「パイネ国立公園」の入り口では、ラクダの仲間の愛らしいグアナコのお出迎えを受ける。人見知りはしないが触れるほどには近寄らない。

「パイネ国立公園」の目玉は、なんといってもトーレス・デル・パイネだ。トーレスはスペイン語で塔を意味する。まさにパイネの塔だ。三つの巨岩峰の標高は 2,700m から 2,800m。切り立った三峰は、公園のどこからも見える。

次は、氷河。氷河といえば「氷河時代」とか「アルプスの氷河」を思い浮かべるのは私だけだろうか。こちらの氷河は、海はもちろん川や湖に流れ出している。

氷河の楽しみ方は大きく分けて二つある。一つは白い大きな氷の河を眺めることであり、もう一つは氷河が落雷のように大きな音を立てて崩落するのを見ることである。前者は、流れが遅いので削り取られた両側の岸壁の傷跡をみながら、流れ出る様を己の想像力で思い浮かべるしかない。後者は、自然のなせる業なので、遭遇すればラッキー、遭遇しなければビデオで楽しむことになる。

氷河は、せり出して海や河や湖に氷塊となって流れ出す。大小様々だが、南極の氷山には程遠い。小さな氷塊を抱き上げかぶりついてみる。冷蔵庫の氷よりは気泡が多い。ピスコ(ぶどうの蒸留酒)に浮かべればピチピチと心地よい音がするはずなんだが。

「パイネ国立公園」は、トレッキングコースが完備している。時間があればこれをやらない手はない。氷河を間近で見たり、トーレス・デル・パイネをいろんな角度で見たり、珍しい動植物に出会ったりして興味はつきない。ただし、強風にはくれぐれもご注意を。私もいつの日か挑戦したいと思っている。


パイネ国立公園セラノ氷河

  1. ドンデ・エスタ・エル・バーニョ?

サンチャゴに住み始めて困ることは沢山ある。言葉をはじめとして生活習慣の違いによる戸惑いである。私の場合は、外出先にトイレがないのが悩みの種であった。日本の場合、駅・公園・デパートなど人が集まるところには必ずあるが、こちらはほとんどない。8カ月経ってだいぶ慣れてきたがいまだに完全ではない。昨日は久しぶりにこの悩みに遭遇した。あまり話題にはならないけれど重要なことと思われるので報告させていただきます。


エスタシオン・セントロ(中央駅)の隣りにあるアーケード内の有料トイレ
両側のお店と同じ造りできれい。数少ない公衆トイレの一つ

サンチャゴ市内は公の場所でもトイレを探すのは一苦労。トイレがあるのは、ホテル・レストラン・ショッピングモール・遠距離バスなど極めて限られている。私がサンチャゴで初めてマスターしたスペイン語は、「ドンデ・エスタ・エル・バーニョ?」(トイレはどちらですか)だった。

チリ人とトイレのことを話したことはない。我々が思うほど苦労していないようだ。体の構造が違うのだろうか。でも、夜飲み屋街の近くの建物の隅っこで小便をしている男の後姿を何度か見た。これと同じ光景は、日本でも見ることがある。やっぱり人間は同じなのだろうか。

対策はただ一つ。自分の排尿のサイクルを知って、その時間にはトイレのある場所にいるようにすること。

サンチャゴから約125Km南へ電車で行ったときの事。祝日であったので電車は珍しく混んでいた。小1時間経っただろうか、通路の向こう側に座っていた男の子の動きがおかしい。その前の座席には男の子のお母さんが赤ちゃんにおっぱいを飲ませている。どうやら、おかあさんは男の子が尿意を催してきたのに気が付いたようだ。

それからが大変。電車には、もちろんトイレはない。電車は混んでいる。おかあさん、我慢できず、5、6m離れたドア付近に立っているお父さんへ大きな声で「子供がおしっこしたいといっている」と訴える。お父さん、人ごみの中でどうしょうもない。近くに立っていた男が「そこでさせたら」と無責任に言う。周りの人は一斉に笑う。

別の男が「次の駅のホームのはずれにトイレがある。電車が止まったら急いで連れていけばいい。」という。 男の子はがんばった。停車と同時に、男の子はドア付近にいる父親のもとに向かう。先ほど笑った連中も男の子が早く行けるように通り道を作る。お父さん、停車と同時に男の子をホームのはずれのトイレに連れて行く。

ああ、無情。男の子が戻って来ないのに発車の合図。乳飲み子を抱いたお母さんと男の子を連れたお父さんが離れ離れになってしまう。乗客は一斉にため息をつく。ドアがしまりかけた。その時一人の若者がドアの間に入り、しまりかけたドアをとめた。男の子とお父さんが電車に戻った。車内は、一斉に拍手と歓声の渦。

電車にトイレがないことが、このように乗客に連帯感を持たせるなんて。だれが想像できただろう。トイレがないことの効用はまだある。それは排尿の快感を増大させることである。先程の男の子はきっと我慢した喜びを味わったにちがいない。チリと日本とどちらがいいのだろうか。

チリに渡り、日本語を教えているWebマスタの友人、塩田悦三郎さんが、知人のメールマガジンに投稿しているサンチャゴレポートという記事を、そのメールマガジン「609studio( http://www.609studio.com/home.html )」とご本人の了解を戴き転載させて頂いているものです。